2018年8月26日日曜日

徳利を使ったスピーカー『とっくりすぴか』をつくってみた!

日本酒を入れる器として、江戸時代後期に普及した徳利と猪口は、いつしか和の象徴となり、酒好きな外国人観光客のお土産にも人気なのだという。

酒をそそぐときの「トクッ トクッ」という独特の音がなんとも風流で、飲む量も徳利(お銚子)1本で1合、2合という具合にわかりやすく、鍋でそのまま温められるのも便利だ。この理にかなった作りが、長らく愛されてきた理由ではないだろうか。

今回は、この徳利を使ったスピーカーをつくってみようと思う。使用したのは、「Supreme」の『Sake Set』で採用された徳利と同じデザインで、清酒 「松竹梅」のロゴが印刷されているもの。2合サイズとしては、定番のかたちのものだ。

この徳利の特徴は、胴体部分が長く注ぎ口がラッパ状になっている点で、この形状をスピーカーにいかせれば、音道(首)で音(空気)を加圧させ、勢いよく空気室へ送りこまれた音が反射してふたたび首を通ることで再度増幅されるという、ダブルバスレフ効果が期待できそうだ。

注ぎ口にスピーカーユニットをシリコンで逆向きに固定することで、増幅された音はラッパの形状に沿ってスピーカーユニットのコーン(膜)から外に広がる構造だ。密閉式スピーカーではあるが、コルクを使った空気銃のように空圧を効率的に利用して音を出すのが特徴である。

スピーカーユニットには、38.5mmのフルレンジでインピーダンス4Ω、最大入力6Wのものを使った。徳利の注ぎ口にジャストフィットするサイズである。コーンは紙だが、エッジには高耐久ゴムが使われておりつくりも堅牢でずっしりとした重さもある。

スピーカーユニットを逆さにセットして音を聴いてみると、背面からも過不足なく高域が出ており、ラッパ型の噴射口から排出される低域の反応も良く、バランスの良い澄んだ音という印象だ。徳利の底面は、燗酒が冷めるのを防ぐためにドーム型に凹んでおり、内部に半球が突き出るかたちとなるが、ここからはね返った音がラッパから排出されるしくみだ。

陶器を使ったスピーカーの響きが自然なのは、この記事にも書いたとおりだ。セラミックという素材は、人の温もりのような柔らかさを感じさせる性質を持っており、スピーカーの材料として、もっと注目されてもよい素材ではないだろうか。

徳利に水を注いでいくと、たまった水がラッパのかたちに沿って勢いよく噴出されるのがわかる。音もこの水と同じように円環状に放射されるはずで、フレームのスリットから全方位に向けて音が広がる構造だ。
大きいほうがスピカA、小さい方がスピカB
おとめ座で最も明るい恒星のかたちは、徳利によく似ている。

この徳利スピーカーの名称は、『とっくりすぴか』に決めた。「スピカ」とは、春の夜に青白く輝く、おとめ座で最も明るい恒星のこと。

天体望遠鏡で見ると、AとBのペアで構成されており、大きいほうがスピカA、小さいほうがスピカBと呼ばれている。スピカAが太陽の8倍、スピカBが太陽の4倍の大きさを誇る大きな恒星で、このスピカの全体像が雪だるまのようであり、徳利にもよく似ているのだ。

このスピーカーで何を聴くかだが、もっとも似合うのが民謡だ。見た目のイメージにぴったりで、これで民謡を聴きながら日本酒を飲み、そばを食べるのもなかなか乙かもしれない。

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