2018年8月14日火曜日

ワイングラスを使ったスピーカー『GLASS DOME』をつくった!

ワイングラスを使ったスピーカーをつくってみた。スピーカーユニットをエンクロージャーに対して逆向けに取り付ける方法は、自作の『CAN SPEAK』の記事ですでに公開済みである。

『CAN SPEAK』はリング状に伝わった音を底面でリバウンドさせ、ふたたびリング状に跳ね返ってきた音を、スピーカーユニットのコーン(膜)を通して音を出す方式である。

この音がリバウンドした際に、ドラム缶独自の定在波が発生し、それがゲートエコーのような効果をもたらし、金管から放射される蓄音機のような独特の音場をつくりだすのだが、この方法ではどうしても高域が減衰してしまい、こもりがちの音になってしまう傾向が拭えなかった。

そこで極力、音の反射をふせぐためにドーム型のエンクロージャーを考えているうちに、頭の中でひらめいたのがワイングラスだった。そしてさっそく試してみると、これが思った以上の効果をあげることがわかった。
偶然、わが家で愛用しているワイングラスに東京コーン紙製作所の F77G 98-6 をのせてみると、奇跡的にもエッジ外周のゴム枠にぴったりとはまるではないか!

ちなみにこのワイングラス、港区のインテリアショップで売られているもので、ショートステムのデザインが美しく、ワイン以外にもビールやソフトドリンクにも合うなかなかの優れものだ。

スピーカーとの密着具合は完璧で、まるですべて図られていたかのような組み合わせである。

極力シンプルにという今回のコンセプトに沿って、アンプとの接続にはターミナルを使わず、ワニグチクリップのスピーカーケーブルを使うことにした。

音を聴いてみての感想だが、スピーカーユニット正面から放射される音が全方位にわたって乱反射することなく180°まわってコーン(膜)に戻ってくるためだろう、にごりのないピュアな音という印象だ。

高域はセンターキャップから発せられるため、正面で聴いた場合と比較すると明瞭度が落ちてしまうのは仕方ないが、それでも乱反射のない純度の高い音が還流することの効果ははかりしれないものがある。
シンプルの極みのような構造とデザインではあるが、これは立派なスピーカーである。試しに水を半分ほど注いだ状態で音を聴いてみると、中域が前に出てみずみずしい音に変化した。

水の量を増やしていくと低域が減衰していくのが分かった。エンクロージャーの空気量を水で容易に変化させることができ、音の変化を自由に楽しむこともできる。このまま『大人の科学』の付録になりそうなスピーカー、名付けて『GLASS DOME』がここに誕生した。

2018年8月8日水曜日

ミッキーマウスのケースで『サウンドトランク』をつくった!

1980年代に、大阪のラッキーコーポレーションという会社が製造販売していた、ミッキーマウスのカセットテープケースを骨董商のオークションで入手した。

いつ、どこでどのような経緯で売られていたものなのかは不明だが、ウォルト・ディズニー・カンパニー社のライセンスを取得して作られたオフィシャルグッズのようである。

素材はブリキでできており、サイズは縦:24cm 横:26cm 奥行:8cm。半円形の取っ手とミッキーマウスの絵がなんとも可愛らしい。
オフィシャルグッズとはいえ、使用感もあるし掘り出し物ではなかったのだが、この機会を逃すと二度と手に入らないかもしれない・・・そんな思いで入札してみたら、運良く?そのまま落札することができた。

さて、このケースを何に使うかだが、デザインを一目見て頭の中でひらめいたのがミッキーの耳にスピーカーを埋め込んだ、アンプ内蔵スピーカーを作ることだった。まずは、耳の部分にぴったりなスピーカーユニットを探さなくてはならない。できればセンターキャップのないタイプで5cmφ以内のものが理想だ。

検討した挙げ句、購入したのは通販で売っていたフルレンジスピーカーユニット2インチ(50mm) 。「小口径なのに圧倒的迫力!高品質&高耐久フルレンジスピーカー」と謳われている製品で、マグネットには ACP W225R 8Ω 3W 130513A と印刷されている。






難点は、ファイバーコーン+樹脂コーティングの素材でできたコーン表面がシルバー仕上げされている点。ミッキーの耳に埋め込むので、ここは黒でなくてはならない。そこで、家にあったつや消し黒のスプレーで表面を塗装することにした。

次は、ミッキーの耳にピッタリの穴を開ける作業である。ここを失敗すると、元も子もないので慎重に作業をしなくてはならない。ブリキは薄い素材を使っているため、削る作業自体はそれほど大変ではないが、あせって作業をするとプリント面に傷を付けてしまうこともあるからだ。

注意点としては、一気に片側から削るのではなく半分ほど削れたら反対側にも切り口を開けて少しずつ両面から削っていくこと。これは、他の素材を削るときも、きれいに仕上げるための必須テクニックだ。

次に、スピーカーユニットをバッフルに固定する工程だ。このスピーカーユニットは、取り付け金具がコーンより奥に付いていて扱いづらい構造となっている。しかも、ミッキーの耳に8つのビス穴を開けなくてはならない。これでは見た目も良くないので、他の方法で固定するしかない。

加工の手間を省き、バッフルとユニットのすき間を埋めるためにとった方法は、シリコンシーラントによるコーキングだ。

ケース内には『サウンドトランク』用の小型アンプと12Vのバッテリーを搭載し、iPodをつないで音を出してみると、かなりの音量で切れの良い音が飛び出してきた。

「小口径なのに圧倒的迫力!高品質&高耐久フルレンジスピーカー」の宣伝文句も肯ける、必要十分な音量とメリハリのある音質を楽しむことができるスピーカーが完成した。
ミッキーマウスの『サウンドトランク』 が完成した週末は、休暇をとって静岡県の保養所に宿泊したのだが、プールサイドで夕陽を浴びながら聴いたイーグルスの「ホテル・カリフォリニア」は格別だった。

10W×2を出力するデジタルパワーアンプは、8Ω 3Wの5cmフルレンジを余裕でドライブしてくれる。この音量があれば、海水浴に持っていっても十分に使えそうである。空いているスペースにサンドイッチとジュースを入れて、ランチバッグとして使うのも良いかもしれない。

キャンベル・スープ缶を使った『CAN SPEAK 』をつくった! -4

キャンベル・スピーカーの上にのせる、音響拡散のための球面素材に使えそうなものを偶然ある店で見つけた。

ガラスの多面体で構成されたペーパーウェイトがそれだ。スチール球が約100gなのに対し、ガラス球のほうは約50gと軽量だが、ミラーボールのような反射面が美しい。

このガラス球、ペーパーウェイトなので底面が平らになっているため、上にのせる際には上部のとがった部分をスピーカーグリルの中心に埋めるようにして設置してみた。

2個のせてみると、見た目のゴージャズ感ではスチール球より上である。音の拡散性能については、中心から12面にわたってガラスがカットされているので、スピーカーのセンターキャップから発せられる音を12方向へ拡散させる効果が期待できる。

スチール球との比較では、ガラス球のほうがエッジが効いていて音を拡散する瞬発力は上回っているようだ。
一方のスチール球は、ガラス球で際立っていたエッジがとれ、反射する向きがすべて均一なため音波が振る舞うことで音がまるくなり、より自然な広がり方をしているように感じる。

いずれにしても、聴感上の差はごくわずかなので、最後は気分の問題のほうが大きいかもしれない。

尚、数時間のテストの結果、音量を上げていくとその音圧でガラス玉は微妙に向きが変わったりと影響を受けていることがわかった。

一方、スチール球のほうは微動だにせず安定しており、これは重量の差がそのまま影響しているようだ。

ガラス球は平らな底面を下にすることで、この問題は回避できそうだ。音が拡散していく瞬発力は衰えるが、逆さに設置しているときより音がまろやかになり自然な広がりかたになる。

低音に関しては、倍の重さを持つスチール球のほうが弾力感のあるタイトな響きで一枚上の印象だ。低音が増し音が360°に広がる上に設置上の安定感もあることを考えると、トータルではスチール球に軍配があがりそうである。

2018年8月7日火曜日

キャンベル・スープ缶を使った『CAN SPEAK 』をつくった! -3

キャンベル・スピーカーのグリルの真ん中には、丸い穴が開いている。この穴を利用して、スピーカーから出る音を360°に広げられないかと考えた。

スピーカーが上向きに取り付けられた無指向性のスピーカーの場合、音の出口に球体もしくは円錐状の素材を設置すると音を全方位に拡散させる効果があるようだ。


はじめに思いついたのは円錐の錘。金属製のアルミと真鍮のものが候補に上がったが、アルミは軽くて安定性に欠けるのが難点。真鍮は重くて良いのだが値段が高い。考えたあげくズシリと重みのあるスチール球を採用することにした。

スチール球の大きさは31.75mmで、やや大きめのビー玉といったサイズである。
このスチール球を真ん中の穴にのせてみると重量もあるためか、ピタッと止まって安定感もある。
見た目もグリルと同色で、キャンベル缶の丸みを帯びたデザインとのマッチングも良い感じである。

さて、音の変化はどうかというと、音が広がる効果はもちろんのこと、スチール球の重さで缶全体の共振が抑えられるためか、パッシブラジエーターからの低音がよりタイトになり、低音があきらかに増すことが分かった。

(1)グリルなし、(2)グリルのみ、(3)グリル+スチール球を聴きくらべた結果、 (3) の弾力感のある低音の響きが気に入った。

エンクロージャーの重さや厚さに関しては、さまざまな意見があるが、個人的には楽器のように鳴るスピーカーが好き(良く鳴るアコースティックギターほど、木は薄くて軽い)で、従来のような重厚長大型の考え方には異を唱えてきたのだが、このスピーカーに限っては、適度な重さが必要なようだ。

スチール球をのせるだけで、音は空間全体に広がり、パッシブラジエーターが目を覚ましたかのように震えだすのだから不思議だ。試しに、渡辺貞夫の『ウォーターカラーズ』という曲を聴いてみると、サックスの響きがとても自然に聴こえてきて感動した。寺井尚子による『シャレード』のバイオリンもとても自然な響きで生演奏に近い音だ。

2018年8月6日月曜日

キャンベル・スープ缶を使った『CAN SPEAK 』をつくった! -2

バナナ端子の取り付けも無事に済んだので、いよいよ音出しである。スピーカーづくりでもっともワクワクする瞬間だ。音源は、もっとも聴き慣れたビートルズを選んだ。

最近は、もっぱら音楽を聴くのにamazonの『Echo Dot (エコードット) Alexa』を使っている。「アレクサ!」と呼びかけて音楽をリクエストするだけで、ありとあらゆる音源を聴くことができる。この『アレクサ』からBluetooth内臓のデジタルアンプに音を飛ばし、キャンベル・スピーカーにつないで音を出す仕組みだ。

前置きが長くなったが、肝心の音はどうかというと、これはかなり良い印象である。とにかく音がクリアで、パッシブラジエーターの効果で低音もこのサイズにしては出ているように思う。

ちなみにパッシブラジエーターとは、電気的な接続をしない振動コーンのことで、小型のBluetoothスピーカーなどに採用されているものだ。JBLのオリンパスで使われていたドロンコーンと同じである。

子供のころ、公園にある土管のなかで「ワッ」と声を出すと音がリング状に広がるのを経験したことのある方は多いだろう。
円筒形であれば音は同じように伝わるので、この原理を応用したのが「波動スピーカー」である。

波動スピーカーは、円筒状のエンクロージャーの両端にスピーカーユニットを取り付け、両方のスピーカーが発する空気振動を円筒のなかで衝突させ、空圧が高まる中央もしくはバッフルに開けたバスレフから低音を効率的に放射する方式である。

今回製作した『CAN SPEAK』は、構造はこの波動スピーカーと似ているが、(L) (R) 独立式なので、各々の音声信号はそのままにパッシブラジエーターで低音を増強する方式だ。

構造を楽器にたとえるなら、もっとも近いのがフロアタムかもしれない。ドラムは表裏に皮を張ることで振動を増幅させて大きな音を放つ。今回の『CAN SPEAK』もまさにドラムと同じ発想である。


さて、キャンベル・スピーカーに話を戻そう。スピーカーのセッティング方法としては、底面のパッシブラジエーターから出る低音を閉じ込めずに響かせるために、ゴム足などをかませて音の抜け道をつくってあげると良いようだ。

また、上面はスピーカーユニットがむき出しのため、スピーカーグリルがあったほうが良さそうである。そこで、このサイズに合う金属製のグリルをあるところに注文すると、イメージ通りのものが出来上がってきた。
試しにそれをスピーカーの上にのせてみると、ピッタリ収まって見栄えもいい感じだ。一見、灰皿のようにも見えるのだが、これはれっきとしたスピーカーである(笑)。

ちなみにキャンベル缶のラベルには、クリアラッカーでコーティングを施している。また、スピーカーユニットとパッシブラジエーターの接合部には、空気漏れが起こらないようにシリコンを充填している。こうした作業一つで、音がタイトになり低音の響きがグッと良くなるので、スピーカーづくりというのは本当に奥が深い。

キャンベル・スープ缶を使った『CAN SPEAK 』をつくった! -1

普遍的に美しいデザインというものがある。日常的によく目にするものであっても、違和感なく生活の1シーンに溶け込んでいるアイコンのような存在。

例えば、20世紀工業デザインの巨匠と呼ばれる、レイモンド・ローウィがデザインしたコカ・コーラのボトルがそうである。そしてアメリカの食品のなかでは、コカ・コーラに次ぐアイコンとして世界的に認知されているのが、キャンベル・スープ缶のデザインではないだろうか。

キャンベル・スープのデザインを担当したのは、実はアンディ・ウォーホルではない。ウォーホルは、版画のモティーフとしてキャンベル・スープを使っただけで、スープ缶のデザインそのものは別のデザイナーによるものだ。ちなみにそのデザインのアイデア(赤と白を基調としたデザイン)はキャンベルの重役の一人であったハーバートン・ウィリアムズによって1898年に打診されたとのことだが、実際のデザイナーの名前は不明である。

中央には、1900年のパリ万博で受賞したゴールドメダルが配されている。ベタと言えばベタなレイアウトだが、このメダルも含めたデザインのすべてが今では歴史的なアイコンになっている。

さて、このキャンベル・スープ缶を使ったスピーカーを今回はつくってみた。キャンベル・スープ缶のデザインには、日本向けのものとアメリカ直輸入ものの2種類がある。わたしが今回使用したのはアメリカ直輸入もののほうだ。缶のサイズは全国共通で、側面には上下に向かってリング状の突起が付いており、それを覆うように紙のラベルが貼られている。

缶を開けるには、イージーオープンエンドが採用されているため、上部のツマミを持って引っぱるだけ。ペロリときれいに真円の穴を開けられるので、スピーカー工作にはうってつけだ。

この穴にぴったりはまるスピーカーユニットを探したところ、ちょうど良さそうな6cmフルレンジを見つけた。フレームにネジ穴がなくステーもないが、今回の場合はかえって好都合である。

そして、底面にはパッシブラジエーターを取り付け、スピーカーの低音不足を補うアイデアを盛り込んだ。この取り付けのためには底面をきれいに丸くカットする必要があり、もっとも工作で苦心する箇所だろう。

最後に、缶の裏側にバナナ端子を取り付けた。缶はブリキ製なので、薄い鉄板でできている。つまり、板そのものが電導素材のため、バナナ端子をそのまま通すと極性が交わってしまい、きちんと音が出ない。

スピーカーコードが筐体からニョッキリ出ている空き缶スピーカーをたまに見かけるが、私はバナナ端子にこだわってある方法を使って絶縁することにした。

2018年7月22日日曜日

アンビエント型スピーカー『CAN SPEAK』試聴インプレッション

今回は、コンランショップで売られているイギリス産の紅茶「C&B カートライトアンドバトラー EARL GREY TEA BAGS」の空き缶を使ったスピーカー『CAN SPEAK』の試聴インプレッションについて書いてみたい。

このスピーカーの構造は、今までのスピーカーの常識を覆す作りとなっている。スピーカーユニットは、円筒の空洞に向かって取り付けられ、接合部はシリコンで埋められている。では、どこから音が出るのかというと、高域は直接コーン(スピーカー表面の膜)背面から、中低域は円筒の空気室からコーンを通して、前後左右4つの方向に広がるかたちで音が出る仕組みだ。

空き缶などの円筒形のエンクロージャーにスピーカーユニットを逆向きに取り付けて音を出す方法については、前回の記事に書いたとおりだ。

出てくる音は、通常のスピーカーとはあきらかに異なる。四角い木の箱で作られた従来のスピーカーは、レコーディングスタジオのモニターと同様に逆三角形型のリスニングポジションで聴くことを前提に作られているが、このアンビエント型スピーカーは、コンサートホールで生の演奏を聴いているかのごとく、楽器一つひとつの音の広がりに近い音場を作り出す性質を持っている。

もっとも本領を発揮するのは、クラシック音楽である。本来、すべてのアコースティック楽器は、周囲の空気を振動させて音を響かせるものだ。

レコーディングスタジオでは、楽器の音をマイクで拾ってマルチトラック収録し、それをミックスして人工的に音場を作りあげるのだが、指揮者や楽団によっては、こうした作業を嫌う場合もあり、より自然な音を録音するために、ワンポイントで一発録りする方法などがとられてきた。

『CAN SPEAK』の音は、コンサートホールなどで聴くアコースティック楽器に近い響きであり、ホーンのような残響が特徴である。

試しに、1930年代のスイングジャズを聴いてみると、音に広がりが出て立体的な音場が目の前に広がった。SP盤にモノラルの蓄音機が主流の時代に作られた音楽のため、ステレオのような左右の広がりはないが、前後の広がりを感じる録音がされており、こうした音源にこの『CAN SPEAK』の響きはうってつけなのだ。

個人的に大好きな、ダイヤルやサボイに録音された1940年代のチャーリー・パーカーを聴いてみると、まるで水を得た魚のように生き生きと『CAN SPEAK』が鳴り出した。これは、以前友人の家で聴かせてもらった78回転の蓄音機の音そのものである。
ビリー・ホリディのデッカやコロンビア時代の音源も、妙に生々しい音で鳴ることからも、この『CAN SPEAK』がSP盤の時代に録音された音源再生に適しているのは間違いないようだ。その反面、ロックやポップスなどの現代的な音源となると、独特な残響が耳についてしまい、奇妙に感じる人もいることだろう。

グレン・グールドの『ブラームス間奏曲集』(1960年)、スヴャトスラフ・リヒテルの『平均律クラヴィーア』(1970年)などのクラシックの愛聴盤もなかなか良い感じで鳴っている。