2011年6月12日日曜日

YAMAHA Dynamic Guitar No.70 リペア記 その4


オリジナルと思われる象牙のサドルと、今回使用する真鍮棒との比較です。ノギスで測ったところ、何と3mmの違いがありました。これで、異常に高かった弦高も改善するだろうと思って、弦を張ってみると…。最初と比べて低くはなったものの、12フレットで6弦側が約5mmあり、まだまだ高めです。真っすぐに見えたネックですが、ネックヒールのヒビにその兆候が見られたように、元置きが起こっているようです。


こうなると、ネックをリセットするか、ブリッジを加工してサドルを低くするしか方法は無さそうです。施策に迷ったので、専門書を購入して調べることにしました。現代ギター社から出版されている「メイキング・マスター・ギター」(ロイ・コートナル著)です。



この本によると、タイ・ブロックとサドルには十分な角度が必要で、この角度が音の明瞭度に影響する、とあります。当然ブリッジは、よく考えられて設計されているはず。これで、ブリッジの加工策はボツにしました。

ギターリペアのなかでも、最も困難なネックリセットを行う羽目になりそうです。まず、ネックを取り外す際に必要な、高温のスチームを放射できるクリーナーを注文しました。

これで準備は整いましたが、後で後悔したくないので、その前にできることはなるべくやっておこうと考え直しました。その方法とは、ネックアイロンによる矯正です。専用のネックアイロンは、7万円前後と非常に高価なので、アルミの角パイプを加工して使うことにしました。

ホームセンターで、幅5cm×厚2.5cm×長1mの角パイプを45cmにカットしてもらいました。残った55cmの角パイプのほうは、エレキギターやベースのネック矯正に使えそうです。L型クランプも一緒に購入して、自前のネックアイロン工具がそろいました。後は、ラバーヒーターがあれば専用のネックアイロンと同じ効果が期待できます。







ラバーヒーターはネットで注文したので、それが届くまでの間、工具を使ってリハーサルしてみることに。真っすぐに見えたネックですが、水平の角パイプを当ててみると、やはり順反りしているのがわかりました。クランプを締めていくと、指板が角パイプと水平になっていくのがハッキリ確認できます。ラバーヒーターが届いたら、熱でネックに水平の癖をつけてあげようと思います。

YAMAHA Dynamic Guitar No.70 リペア記 その3

ブリッジの再接着が終わりました。梅雨に入ってしまったので、ニカワが固まるまで一週間以上かかりました。以前、No.10の時にも書きましたが、再接着が必要なダイナミックギターのブリッジは、ビス穴のある中心を頂点にして弓なりに変形している場合が多いので、センターのビスを締めることで木がしなり、ブリッジ後部(タイ・ブロック)側は全体的にぴっちり密着します。






一方で、ブリッジ前部(サドル)側には、まだ浮きがあることがあります。この場合は、弦を張ってあげるとサドルから下方向へと力がかかるので、ブリッジ全体を密着することができます。今回はU字クランプを使いましたが、ダイナミックギターの場合、クランプ無しでもこの方法でかなり安定するのではと思います。



さて、次はヒビの入ったネックヒールの補修です。補強用に盛られたニカワを熱で溶かしきれいに拭き取ってみると、幸いヒビは木の表面数ミリ程度で止まっていました。この隙間にタイトボンドを注射器で流し込んで、クランプで固定。乾いた後、接着面を磨いて表面をタッチアップしてから、ヒール全体をクリアで吹きました。





これで、ネックヒール部分のリペアも終了です。メディコムのキングブライトを使って、曇っていたサイド全体も磨きあげました。

次は、サドルの高さ調整です。極太の象牙製サドルから真鍮棒に変えることで、どれくらい弦高を下げられるか、次の工程でテストしてみます。

2011年6月5日日曜日

YAMAHA Dynamic Guitar No.70 リペア記 その2

ダイナミックギター No.70 リペアの続きです。ダイナミックギターは、ブリッジがビスでトップに固定されている構造なので、弦の張力でビス穴の周囲が盛り上がってしまいます。ここを水平にしようとすると、その周囲をかなり削らなくてはならず、強度的にも不安です。そこで、スプルース材を削った木の粉とタイトボンドを混ぜたジェルを凹んだ箇所(ビス穴より数cm外側)に盛りつけ、乾いてからサンディングしてブリッジとの接着面を合わせていきます。これで、接着面の下地処理が終わりました。



次はいよいよブリッジの再接着です。ブリッジを取り外す際に、ネジ山がつぶれてしまったので、元々のネジと同サイズ(M3×20)のネジを買ってきました。今度は締め付け強度に耐えられるチタン製の六角ネジです。ブリッジの接着に使う道具(液体ニカワ、U字クランプ、アルミの専用治具)は、事前に通販で入手しておきました。


液体ニカワをブリッジ接着面に塗ってブリッジを接着してから、六角ネジをレンチで締めていきます。ダイナミックギターの場合、これだけでもかなりブリッジを固定できます。


次に、アルミの専用治具をブリッジに乗せてから、U字クランプで上から圧をかけていきます。この状態で、ニカワが乾ききるまで数日間放置します。アルミの専用治具は便利ですが、U字クランプはできればあと2本は欲しいところです。