2018年6月12日火曜日

Faust のアナログ盤がドイツから届いた!

ドイツの伝説的なプログレッシブ・ロックバンド、Faust のデビューアルバム『Faust』は、1971年にポリドールから発売された。
このデビューアルバムは凝りに凝っており、そのデザインは透明のビニールカバーに、拳骨のレントゲン写真がシルク印刷され、透明の塩化ビニールでできたレコードと、赤いテキストで歌詞とクレジットが印刷された透明のインナースリーブの3つで構成されていた。

ちなみに Faust とはドイツ語で拳骨を意味するが、ドイツ人作家ゲーテの代表作とされる戯曲と同名で、その下敷きとなった15〜16世紀のドイツに実在したファウスト博士(錬金術や占星術を使う黒魔術師であったとされる)へのオマージュでもあろうことは容易に想像できる。

amazon で購入したこのレコード、注文から10日後に写真の段ボール箱に収められてドイツから国際郵便で送られてきた。

段ボール箱を開けると、半透明の包みに収められたレコードが出てきた。拳骨と Faust の文字がうっすらと透けており、すでにこの段階からコンセプチュアル・アートの一部のようにも見える。

Faust によるパフォーマンスは、包装を開ける瞬間から始まり、包みを開けてレコードに針を落とすまでの行為は、戯曲の序章なのである。

その意味で、Faust の未開封コレクションとは、封を開けない状態の段ボール箱、もしくは閉じられたままのレコード袋の状態でなくてはならない。

Faust の黒魔術は、封を開けてしまった段階でその半分は解けてしまう。グリコ・森永事件で毒が盛られたチョコレートなどのお菓子と同様、アルバムに印刷された拳骨のレントゲン写真は、封が開けられるのを阻んでいるようにも見える。シースルーなのは、開封しなくとも中身は確認できるのだというメッセージなのかもしれない。

Faust のレコードを聴くためには、レコードをアルバムカバーから抜き取らねばならず、これは3つの透明な媒体で構成されているコンセプチュアル・アートを解体する行為であり、リスナーによって錬金術が解かれる瞬間でもある。

電気的なノイズに続いて、ビートルズの『愛こそはすべて』やローリング・ストーンズの『サティスファクション』のサウンド・コラージュで始まる Faust の実験的な音楽は、1940年代の後半にフランスでシェフェールによって作られ、ドイツのシュトックハウゼンらによって広められたミュージック・コンクレートのひとつの帰結である。そして、アートワークを含めたこのアルバムが、アナログレコードというパッケージメディアの歴史のなかで、他に類を見ない傑出したデザインの一枚であることは言うまでもないだろう。

0 件のコメント: