2008年12月26日金曜日

望郷にまどろむ

佐倉 順二 氏作 「望郷にまどろむ」

絵画を買いました。
今までに、プリントの額装品は何度も買ったことがあるけれど、オリジナルの絵画を買うのは初めてのこと。15年くらい前に、一度だけ版画を買ったことがあるので、それを含めれば二回目ということになる。

「一点物の絵画を買うなんて、自分にはできない」とずっと思ってきた。アーティストとパトロネージュの関係を考えたとき、自分は後者には成り得ないだろうと思ってずっと生きてきたから。

ところが、2008年の12月中旬、この「絵」と偶然にも出逢ってしまった。“一目惚れ” とは、まさにこういうことを言うのだろう。

勇気をだして「この絵は売り物ですか?」と作家本人に訊いてみると「はい」と即答していただいた。さらに値段を聞いて、その交換条件が自分にとって現実的なのか非現実的なのかどうかで悩んでしまった。その場で即答したかったのだけど、原点にかえってもう一度考えるべきと思って、その日は “お茶を濁して” 帰ってきた。

絵画を買うなんて、贅沢者のすること。
自分がそんなことをして本当に良いのか...。
2日間考えて自分の出した結論は「買うべき」という答えだった。

「あの絵を必要とする人間は、(今は)きっと自分以外にいないのだ」と言い聞かせた。この機会を逃したら、きっと後悔するだろう。そう思ったら、その日の足は自然とギャラリーへと向かっていた。

今回の貴重な体験で “絵画を買う喜び” というものをほんの少しだけ味わえたかもしれない。個展が開かれている間は、自分の “所有物” となる絵画がそこに飾られている。
その絵を観る感覚は、今までのように “ただ観ているだけ” のものとはあきらかに違うものだった。好きな絵を観るという喜びを一歩超えた “至上感” のようなものがそこにはあったと思う。

昨夜、代金を持ってギャラリーを訪ねて行くと、絵はすでに梱包されていた。無理を言って、もう一度だけ飾ってもらったのは言うまでもない。

自分に課せられた次の “ミッション” は、この絵を持って年末に実家に帰ること。そして、今年亡くなった親父の眠る墓石の前で、この絵を父に観てもらうこと。

年を越す前に、やることがひとつ増えたことが、なぜか嬉しい。

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