2018年7月9日月曜日

エリック・クラプトンモデル、ホアン・アルバレス整備記 -2

今回は、刷毛塗りでシェラック塗装を行ったが、もしもギターが完全に素の状態だったなら、躊躇せずにタンポ塗りを選んだと思う。わたしのギターは、前のオーナーによって裏板と側板に薄くシェラックが塗装されており、目止めされずに塗装されたのか、表面がすこしざらついているような状態だった。

タンポ塗りするにはふたたび塗装を剥がし、目止めから行わなくてはならず、手間がかかる作業になるため、刷毛で塗り重ねる方法を選んだ。刷毛塗り後は耐水ヤスリでサンディングし、コンパウンドで磨いて塗装面の凸凹が無くなったら、最後にワックスで塗装面を磨いてツヤを出せば完了だ。

サウンドホールから覗くとホアン・アルバレスのシールが貼ってある。シリアルナンバーを見ると、2011年に作られたギターであることがわかる。直筆のサインではなくスタンプが押されているのが、この時代のエスチューディオの特徴だ。

裏板と側板にはインディアン・ローズウッドの単板、トップにはシダーの単板が使われている。出音はボリュームがあり、温かみのあるサウンドだ。3年前より木が乾燥したのかとても鳴るようになった。同時に小平のAST100を入手したので常に両者を比較してしまうのだが、購入時はAST100の繊細でやや硬質な音のほうが好きだったのに、今ではアルバレスの温かくギター全体が共鳴している音のほうが良いと思うようになった。

小平のAST100もとても良いギターなのだが、ウレタン塗装のためか木の経年変化に乏しく、音がほとんど変わらないのに対し、アルバレスのほうは塗装を剥がしていることが影響しているのか、元々の材質の違いなのか、3年でこうも変わるのかというほどの成長ぶりだ。

今回、シェラック塗装が済んで弦を張ってみたのだが、塗装が厚くなった分、共鳴が抑えられるかと思いきや、音はよりマイルドで鳴りも良くなっている印象だ。この変化がシェラック塗装によるものなのか、単に気候の変化によるものなのかは分からないが、すこし不思議である。

高級ギターで使われいるニトロセルロースラッカーの良さはよく知っているが、シェラック塗装されたギターの音は、これがはじめての体験だ。上述の音の印象については、塗膜が固まりきってないことも影響しているのかもしれない。

ウレタンの塗膜が硬質で工業製品的な冷たい音だとすれば、シェラックはしなやかで有機物的な温かい音というのが率直な感想だ。そして、アルバレスのギターの音がどんどん変わってきているのは事実である。あらためて、木は生きているというのを実感する体験だった。

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