2018年3月3日土曜日

神宮前から千駄ヶ谷へ 北東400mの移動

2016年2月、それまで12年半住んだ神宮前2丁目のマンションから、千駄ヶ谷2丁目のマンションへと引っ越した。その移動距離は、北東へおよそ400m。こんなわずかな距離の引っ越しでも、自分にとって・・・それは大きな事件だった。
神宮前2丁目のマンション『原宿インペリアルハイツ』には、独身時代の2003年7月からの8年間と、結婚して子供が生まれ親子3人で暮らし始めた2012年7月から4年半の計12年半にわたって住んでいた。

手を伸ばせばすぐにお気に入りのギターがあり、オーディオ、CD、カメラや本に囲まれたその部屋は、自分の体の一部のようなものだった。しかし、1LDKに約40㎡の空間に親子3人ではどんどん手狭になっていくわけで、意を決して隣町の千駄ヶ谷2丁目にあるマンションへと移り住んだのだ。
ところが、引っ越してから何日か過ぎるうち、なぜか自分のアイデンティティが少しずつ失われていくような虚しさに覆われていき、それは日を追うごとに強くなっていった。

心にぽっかりと穴があいたような日々・・・どうもおかしい、そう思ってインターネットで調べてみると、どうやら巷で言われるところの「引っ越しうつ」の症状であることに気がついた。
その症状とは、以下のようなものである。

•引っ越しの荷物がいつまでも片付かない(片付けようとしない)
•物欲や意欲が低下する
•外出したがらない

「引っ越しうつ」は、徐々に環境に慣れれば自然治癒するのが普通らしく、とくにカウンセリングを受けることもなく数カ月が過ぎたが、改善するどころか追い討ちをかけるようにマンションの大規模修繕工事が始まり、工事の騒音やプライバシーが保てない状態が半年以上も続くという悪条件が重なって、精神的なモヤモヤはその後もしばらく続いたのだった。

長い停滞期間からやっとのことで脱出できたのは、引っ越しから1年半以上経った11月のよく晴れた日。新宿御苑へ息子と2人で取材に出かけたとき、イングリッシュガーデンに咲いていたバラの花壇を見たのがきっかけだった。

あざやかに咲いている真紅のバラを見て、素直にきれいだなという思いが湧き起こった。マイク真木の歌に「バラが咲いた」という曲があるけれど、まさにそこで歌われていた詞そのままの心境になったのだ。

以来、新しいマンションでの生活も変わっていき、次第に気持ちは晴れていった。こうして、引っ越しについて書こうと思ったのも、心境の変化の表れである。その間、実に2年余り。やっと、自分というものを取り戻せたような気がする今日このごろである。

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