エリック・クラプトンがグラミー賞を受賞した『アンプラグド』で使っていたクラシックギターをご存知だろうか? 同じステージで使われたマーティンの000-28が人気になったのに比べ、なかなかスポットの当たらなかったこのギターは、スペインの名匠、Juan Alvarez ホアン・アルバレスによる1977年製のクラシックギターだ。
現在は、2代目のアルバレス氏がギター工房を引き継いでいるのだが、クロサワ楽器がエリック・クラプトンモデルとして特注販売しているのが1977年製を再現したこの特別モデルだ。特徴はヘッドシェイプがギブソンのアコギのようにV字型にくり抜かれている点。
メーカーによる大量生産品とは異なり、個人工房は生産できる本数に限りがある。クロサワに入荷するのも一度に3本から多くとも10本という本数で、たまに限定販売されているようだ。
このホアン・アルバレスのクラプトンモデルが3年ほど前に我が家にやってきた。クラプトンモデルにはC2(定価105万円)とエスチューディオ(定価32万円)の2種類があるが我が家のは廉価版のエスチューディオのほう。
高級版のC2とエスチューディオとの差は木材に加えて塗装工程にある。C2はシェラックニスを塗り重ねたうえに磨き上げられているのに対し、エスチューディオはラッカー塗装で簡易に仕上げられている。
シェラックとは、カイガラムシの分泌する虫体被覆物を精製して得られる樹脂状の物質のことで、アルコールで溶解させた液体をヴァイオリンやギターなどの塗膜にしたり高級家具のニスとして古くから使用されてきた。
わたしの入手したギターは、オリジナルのラッカー塗装を剥がし、シェラック塗装を施している途中のもので、前のオーナーから原料となるシェラックフレークと一緒に譲っていただいたものだ。入手してから3年の年月を経て、今回ようやくシェラック塗装に取りかかることができた。
アルコール純度100%のイソプロピルアルコールでシェラックフレークを溶かすのだが、完全にシェラックが溶解して液状になるまでに二週間ほど時間がかかった。
クラシックギター製作者のバイブルである名著「メイキング・マスター・ギター」(ロイ・コートナル著)によれば、シェラックの塗装方法には刷毛塗りとタンポ塗りの2通りあるという。今回は、慣れている刷毛塗りでシェラック塗装を行ってみた。均等に塗装するということではタンポ塗りよりも難しいのだが、被膜を塗り重ねていく手間が省けるのが刷毛塗りのメリットだ。
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