2018年8月16日木曜日

仕込釜タイプのスピーカー『サウンドケトル』が完成した!

仕込釜とは、ビール工場にある大きな釜のことである。ビールをつくる際に、原材料となる砕いた麦芽に、米、コーン・スターチなどの副原料をお湯に入れて煮る際に使う釜で、その形状は昔から変わっておらず、釜の中央にはチムニー(煙突)がのびている。

今回は、この仕込釜のかたちをヒントにスピーカーをつくることにした。名付けて『SOUND KETTLE』サウンドケトル。仕込釜は英語でCHARGED KETTLE(チャージドケトル)というらしく、そこから思いついた名前だ。

前回は、ワイングラス型のガラスドームをエンクロージャーに見立てたスピーカー『GRASS DOME』を作ったが、スピーカーとしての基本的な構造は今回も同じである。ドームの素材となる筐体がガラスから陶器に変わっただけだ。

白くて艶のある陶器は、一見するとやかんのようにも見えるが元の素材は土だ。陶器を使ったスピーカーというのは、古今東西さまざまなものがあり、なかでも最も有名なのが、ジョーダン・ワッツ社の『フラゴン』だろう。


『フラゴン』は、平べったいとっくりのかたちをしたエンクーローシャーのボディにスピーカーユニットを埋め込んだ形状で、そのユニークなかたちは一度見たらわすれないインパクトのあるものだ。上部には穴の開いた突起があり、ここがバスレフの役割を果たしている。コルクの蓋をあけたりしめたりすることで、低音の調整ができるようになっている。




さて、今回の『サウンドケトル』だが、特徴としては前回つくった『GRASS DOME』と同様、エンクロージャーとスピーカーユニットの接合部にはバッフルを設けず、開口部とスピーカーユニットが直接つながる一体構造となっている。

このため、ドームに向けて放射された音波がはね返ってきた際、バッフルにあたって反射することで定在波が発生するのを防ぐ効果が期待できる。

スピーカーユニットには、重量級のマグネットをもつアメリカ製の8cmフルレンジ、HiVi B3N を使った。コーン素材はアルミで、やわらかさのある素直なサウンドが特徴のなかなか好感のもてるものだ。

しかし、なんといってもつや消し黒で統一されたユニット背面のデザインが美しく、艶のある白磁のエンクロージャーと好対照なのがいい。サイズ的にもちょうど良く、見た目のバランスも良い感じだ。

サイズ:横幅12.5cm×縦15cm×奥12.5cm
重量:約0.95kg

スピーカーユニットと陶器との接合には、白のシリコンシーラントを使った。弾力性のあるシリコンは、陶器のような割れやすい素材との相性もよく、緩衝剤としての役目も果たしてくれそうだ。

今回の陶器は底面が平らなため、内部は完全な球面にはならないが、空気の流れが乱れることなく循環しているのは音を聴いた瞬間にわかった。ドーム型ならではの乱反射を抑えた純度の高い原音再生が可能だ。スピーカーの見た目どおり、ふくよかでやわらかいナチュラルな音が魅力だ。

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