欧文タイプライターは、日本では漢字変換などの問題から一般には普及せず、欧文でやりとりを行う一部の業種でのみ使われていた道具だ。どうしても日本語が必要な場合は、印刷屋の業務用機械でタイプ印刷するか、写植を使って印刷しなければならず、ワープロが登場するまでは、ほんとうに不便な時代だったといえるだろう。
持ち歩きが可能なポータブルタイプライター
今回紹介する Lettera 35 は、持ち運びが可能なポータブル設計で、デスクトップ専用機と比べるとコンパクトなデザインとなっている。発売は1972年で、デザインはマリオ・ベリーニが担当。
金属製の筐体はとても頑丈に作られており、丈夫なプラスティックケースに入れると7.1kgにも達する重量を考えると、日常的に持って歩くのではなく、広い部屋の中などでワーキングスペースを自由に移動して使うために設計されているように思う。
それはそうとこのデザイン、何かに似ているなと思ったら、Macintosh が発売される前の黎明期のパソコン、Apple II がそれである。タイプライターとしては後期にあたる Lettera 35 と、パソコンの市場を切り開いた Apple II 、その両者の共通点とは・・・。
あの Apple II の原型は、この Lettera 35 にあった?
Apple II は、Lettera 35 から遅れること5年後の1977年に発売された、世界で初めて一般ユーザー向けに完成品として生産販売されたパーソナルコンピュータである。
専門の技術者向けではなく、一般の愛好家でも使えるコンピュータとして開発され、総計500万台も売れるヒット商品となった。
Apple II の形状は、本体とキーボードが一体化しており、その原型となったのはオリベッティのポータブルタイプライターであることは間違いないだろう。なかでも、キーボードの段差が少なく平坦な筐体の Lettera 35 をイメージしてデザインされたのではないかと推測するのだが、いかがだろうか。
MoMAのパーマネントコレクションの Olivveti がたったの100円?
Olivettiのタイプライターは、プロダクトデザインの美しさから、ニューヨークの近代美術館にパーマネントコレクションとして所蔵されている。
実物を触ってみると、キーボードのタッチフィーリングとタイプアームの精密な動作、ローラーの動きが指先から伝わってくるフィーリングなど、どれをとっても操作感が素晴らしく、道具としての質の高さに感動させられる。
この、芸術品のような製品が専用ケース付きでオークションに100円出品されていたので試しに入札してみると、なんとそのまま落札されてしまった。長い間、ケースに入れて保管されていたらしく状態は良好。各操作部の動きも快調で、リボンを取り替えればまだ実用として使えそうである。
これからのタイプライターの使い道とはなんだろうか?
キーボードの配列は、パソコンと共通のため、違和感無く使うことができる。ということは、子どもがパソコンのキーボードに慣れるために、アルファベットで文字を打つ練習をするのにちょうど良い教材になるのではないだろうか。
文字を打つとは、こういうことなのだということが視覚的に理解できるし、スペルを間違えないようにキーボードを打つ練習にもなる。電卓があるのにそろばん塾が残っているのと同様、タイプライターは子どものキーボードアレルギーを克服する良い教材となることだろう。
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