大成功を収める前の、若き日のジョン・レノンの人生がどうだったのか? ロックとの出会い、バンドの結成、ポールとの出会い、といったよく知られるエピソードのなかで、育ての母である叔母のミミと、実母ジュリアとの間で揺れ動く、ひとりの若い男性の葛藤の様子がこと細かに描かれる。音楽家ではなく、ひとりの人間としてジョンが成長していく過程こそが、この映画の主題なのだ。
ジュリアの葬式の際に、ポールを殴った後ですぐに彼を抱きかかえて謝るシーンが印象的だが、すこし前にポールも母親を乳癌で亡くしていた事実は描かれていない。あくまで、ジョンと二人の母の関係を映画の軸にしているためなのだろうが、この逸話も加わえることで、“レノン・マッカートニー”という偉大なコンビが生まれた背景を描くことができたことを思うと、すこし惜しい気がした。
しかし、ビートルズをよく知らない層にとっては、一本の映画として、とりわけ「母と息子の物語」に一貫して終始しているという点で、単なる伝記映画ではない作品に仕上がっているのは確かだ。ビートルズやジョン・レノンを知らない人が観ても、充分見ごたえのある映画だと思う。
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