2010年1月3日日曜日

The Beatles (White Album) [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

1968年に発売されたビートルズの10枚目にあたるアルバム「ホワイト・アルバム」を聴いた。オリジナルのステレオマスター音源が元になっている。旧CDとの比較では、中低音の音圧がやや上がっており、1曲目の"Back In The U.S.S.R."では、イントロのフロアドラムの音が強調されて聴こえる。"Glass Onion"では、旧CDにはジョンの歌いだしの直前にリップノイズが入っていたが、今回のリマスター版では消去されている。

"The Continuing Story Of Bungalow Bill"では、オープニングのガットギターの後半部で目立っていたホワイトノイズがきれいにカットされている。また、旧CDでは前曲のパーカッションの音が曲頭に残っていたが、曲間が2秒延ばされているため、今回はジャストの位置で始まっている。


"While My Guitar Gently Weeps"でも同様に、前曲の Eh,Up という掛け声がカットされ、ジャストの位置で始まっている。ご存知、エリック・クラプトンが参加しているこの曲は、個人個人が勝手にレコーディングしているため音数の薄い曲が多いこのアルバムのなかで、メンバーが全員で真剣に演奏に取り組んでいる数少ない曲のひとつ。


"Martha My Dear"では、イントロのピアノ演奏で目立っていたホワイトノイズが目立たなくなり、サビから入ってくるブラスの音圧が上がっている。"Rocky Racoon"のイントロのギターは、旧CDよりも音が丸くなっている。また、始まって1秒くらいの場所にテープの劣化らしきノイズが左チャンネルから聴こえるが、これは旧CDには入っていなかったものだ。


"Julia"では、1分11秒と、同じく2分22秒、2分29秒辺りに入っていたジョンのリップノイズが消されている。こうした処理は丁寧な仕事ではあるが、アーティストの息づかいも同時に消してしまうことになる。

"Sexy Sadie"では、1秒辺りに入っていたノイズが消されている。また、"Long, Long, Long"では、1分3秒に入っていたプツッというノイズが消されている。ところどころで入るドラムの音も音圧が増している。


"Revolution 1"には、もともと様々なノイズが入っているが、この曲にとってはノイズも曲の一部という解釈なのだろう、ノイズ除去は行われていない。ドゥーアップ的なコーラスが雰囲気を盛り上げている。

"Honey Pie"では、全体的に音圧が上がっていて、ディキシーランド風の管楽器もノリがよく聴こえる。晩年のジョージのソロアルバムでも度々取りあげられた曲調で、おそらくジョージはポール作であるこの曲が好きだったのではないだろうか。


つづく"Savoy Truffle"でも、音圧はかなり上がっていて特にブラスの音でそれは顕著だ。

"Cry Baby Cry"では、歌いだしのジョンのボーカルが持ち上げられている。曲の途中でボーカルの定位が左と中央に行ったり来たりするが、全体的にボーカルはオン気味である。


アルバムの最後を締めくくる"Good Night"は、旧CDよりも出だしのフェードインの音量が大きい。ジョンによるこの美しい曲は、ジョージ・マーティンによるオーケストラをバックに、リンゴがめずらしく甘い声で歌っている。オーケストラの演奏を聴くと、あらためて今回のリマスターで音がワイドレンジになっているのがわかる。


Disc1は、ほぼ一律で曲間のブランクが2秒足されており、曲の頭出しで前の曲がかぶることがなくなっている反面、"Back In The USSR"と"Dear Prudence"に入っているジェット機の音が途切れるという不自然さを生んでいる。一方、Disc2のほうは、旧CDとの曲間の差はほとんどない。

Magical Mystery Tour [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

1967年に発売された9枚目のアルバム(イギリスではEP2枚組)「マジカル・ミステリー・ツアー」を試聴した。旧CDと同様、オリジナルステレオ音源が元になっている。旧CDより全体的に中低音の音圧が上がっており、1曲目の"Magical Mystery Tour"では、バスドラムとベースの音が明らかにブーストされているのがわかる。ベースのブンブン唸る音やピッキングの気配が伝わってくる辺りは、好みもあろうが、よりHi-Fi感は増している。

"The Fool On The Hill"では、1分07秒辺りから入るタンバリンの音が、微かに明瞭になっている。"Your Mother Should Know"では、歩くようなベースラインの音がより太くなっていて、違うベースアンプを使っているように聴こえる。


"I Am The Walrus"では、旧CDでは消されていた、イントロで右チャンネルのオーケストラの導入部に入るメロトロンの音が、今回のリマスター版では消されず生かされている。臨場感が増して、スタジオの空気感が伝わってくる感じだ。また、間奏の後となる、2分11秒からのサビは、旧CDではジョンのボーカルに強いフェイザーがかかって、音がこもった感じになっていたが、今回のリマスターでは左チャンネルに高音域を加えることで、この"こもり感"をやわらげている。(ミックスそのもののヴァージョンも旧CDとは異なるようだ)


"Hello Goodbye"は、全体的に音圧が上がっており、低音がブースト気味に味付けされている。"Strawberry Fields Forever"も、ヴァージョン違いの多い曲だが、旧CDとの違いは音質以外には見あたらなかった。ただし、曲が終わった後のブランクが新CDのほうが3秒短く、次の"Penny Lane"がすぐに始まる。"All You Need Is Love"に関しては、音圧も含めて旧CDとの違いはほとんど感じられなかった。


このアルバムでは、明らかに音が変わっている曲もあれば、ほとんど変わっていない曲もあるはで、おそらくリマスターにかける時間も、曲によってかなりのバラツキがあったのではないかと思わせる発見があった。ステレオマスターにも複数のテイクがあるのが理由と思われるが、エンジニアのこだわりも多少は反映されているのかもしれない。

2009年12月30日水曜日

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

1967年に発売されたビートルズ8枚目のアルバム「サージェント・ペパーズ〜」を試聴した。旧CDと同じステレオミックス音源が元になっている。全体的に音圧が上がっており、冒頭のオーケストラ・リハーサルと観衆の音からしてすぐにそれは感じられる。

2曲目の"With A Little Help From My Friends"のイントロ部分に入る歓声やティンパニの音も明瞭で、音が広がっているのがわかる。4トラックのテープレコーザーを使ってレコーディングしたとは思えない変幻自在のサウンドは、リマスター版でさらに磨きがかかっている。"Lucy In The Sky With Diamonds"のミュートがかったベースラインはより太くなり、どっしりした響きに生まれ変わっている。

この作品は、モノラルとステレオでミックスが異なっており、テープスピードや効果音の位置などが異なる曲も存在するが、今までの作品とは違ってステレオ版への力の入れようには目を見張るものがある。"Fixing A Hole"の後半で重なるコーラスはより大きく感じられ、ハープシコードの音も歪みが減少しているように聴こえる。

旧CDでは、"She's Leaving Home"で、ポールの歌いだし部分にプツプツという小さなノイズが入っていたが、新CDでは除去されてダブルバスの低音もよく響いている。

"Within You Without You"のタブラの音は明瞭になっており、音にメリハリが加わっている。ジョージによるこの曲は、インド音楽風のアレンジだが、旋律は美しくプログレッシヴ・ロック風にアレンジされていれば、もっと人気の曲になっていただろう。


"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)"のイントロに入っている観衆のざわめきは、旧CDではやや右側に定位していたが、新CDでは中央に寄せられている。また、曲が始まって11秒から17秒くらいにかけてマイクテストのようなメンバーの声が入っているが、新CDではよりはっきり聴きとることができる。


また、"A Day In The Life"のアウトロで、4分50秒辺りにオーケストラの残響が続いている途中に、イスがきしむ音と「シッ」という誰かの声が入っているが、今回のCDにもそのまま残されている。

細かなノイズリダクションや、例外的にリミックスが施されているなど、他のタイトルと比べてもより丁寧な仕事が行われているのは確かだ。

2009年12月27日日曜日

Revolver [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

ビートルズの7作目のアルバム「リボルバー」は、彼等がライブ活動をやめて本格的なレコーディングに没頭した最初の作品だ。今回の新CDでは、1966年のオリジナルステレオミックスをベースにマスタリングされている。1987年に発売された旧CDとの比較では、音圧が全体的に上がっていて、曲によっては明瞭度も向上している。

"Eleanor Rigby"は、弦楽八重奏をバックにした曲だが、音圧の違いが顕著に現れている。"Love You To"のイントロのシタールは、歪みが抑えられているのがわかるし、"Here, There And Everywhere"のコーラスを聴くと、旧CDよりも音に厚みが加わっている印象を受ける。

音質の違いが最も顕著なのが"Yellow Submarine"で、曲間に挿入されるサウンド・エフェクトの音は明らかにリアルになっている。

また、2分02秒からのサビ(コーラス)は、よりいっそう音圧を高めてメリハリ感が強調されている。ただし、これはほんのわずかな改良であり、ヘッドホンでじっくり聴いて気がつく程度である。

(ちなみにヘッドホンは、録音スタジオの定番である SONY MDR-CD900ST を使用)


前作までの音づくりとは一線を画し、この頃から4トラックを使って録音されていることもあり、ビートルズが新しい次元のアーティストへと変わっていく強烈な印象を残すアルバムだ。ステレオとしてのバランスは、まだ実験色が強いが、前の6作品と比べると格段に現代的なミックスが施されている。


近年、このアルバムの評価は上がっており、ビートルズのベストアルバム投票でも上位にくることが珍しくないが、上記のような音づくりの影響もあるのではないかと思う。

2009年12月26日土曜日

Rubber Soul [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

1965年12月に発売された、6枚目のアルバム「ラバー・ソウル」の2009年版リマスターを聴いた。1987年版の旧CD発売の際に、ジョージ・マーティンによるリミックスが施されているが、今回のリマスターもリミックス版が元になっている。前回のリミックスは、時間をかけて丁寧に行われているせいか、リマスターによる音質の違いはあまり感じられないが、"Nowhere Man"では、出だしのコーラスがひとまわり大きく、リバーブも深くかかっているのがわかる。

全体的に中低音の音圧が加わっているが、ベースの音は太くなっているにもかかわらず明瞭度は上がっている。オリジナルのステレオミックスでは、演奏とボーカルが左右でハッキリ分かれていたが、前回のリミックス時に音は中央に寄せられている。そうはいっても、時代とともに進化している現代的なステレオミックスとは異なり、曲によってベースが左右どちらかに振られているなど、まだまだ改善の余地は残されていると思う。

1999年に映画のリバイバルと合わせて大胆なリミックスが施された「イエロー・サブマリン・ソングトラック」には、賛否両論があるが、いつか必ず再評価される時期が来ると思っている。このアルバムからは、"Nowhere Man"と"Think For Yourself"の2曲が選ばれ、現代風にリミックスされているが、コーラスの定位のさせかたといい、ステレオ的なバランスといい、よく練られてミックスされており、とてもよく出来ていると思う。

ビートルズの音源は世界遺産なのだから、オリジナルをいじるべきではないという意見も解らないではないが、新たな音を加えたり、本来あるべき音を削ったりするのでなければ、リミックス技術を駆使してより聴きやすく自然なステレオにするくらいは許されても良いのではないだろうか。今回のリマスター版を聴いて、より一層この思いが強くなった。いつのことかはわからないが、次回は大胆なリミックス版を期待したい。

Help! [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

ビートルズ、5枚目のアルバム「ヘルプ」の2009年版リマスターを試聴した。1987年にリリースされた旧CDでは、前作の「フォー・セール」まではモノラル版のマスター音源が採用されていたが、本作はジョージ・マーティンによるステレオリミックスが1987年の時点で施されており、今回のリマスターではオリジナルステレオ音源ではなく、このリミックス音源が元になっている。

前作「フォー・セール」では、モノとステレオという違いこそあれ、音質に大きな違いあったので、期待して聴いてみたのだが、中低音の音圧が多少強調されていることを除いて、音質的な変化はあまり感じられない。当然、リミックスも同じなので、過去4枚では頻繁にあったリミックスやテイクにおけるヴァージョン違いも存在しない。同時に発売された MONO BOX の価値は、この「ヘルプ」以降のアルバムで発揮されるということになるだろう。

曲別では、ドラムの音がもっとも比較しやすい"Ticket To Ride"で、音質の違いを感じることができる。バスドラとタムタムの音が強調され、ラウドな音になっているのがはっきりとわかる。音のクリアさではあまり大差がなく、刺激が少ない分、旧CDのほうが聴きやすいという意見が出てもおかしくないと思う。

旧CDのほうが、フラットに味付けされたイギリス製スピーカーで、リマスター版のほうが、やや刺激的なアメリカ製スピーカーといった感じだ。また、音圧が加わった分目立たないが、ステレオ的な広がりはリマスター版のほうが若干感じられる。

リマスターされて著しく音質が向上したとは言いがたく、CD単体で買い替える価値はあまり見出しにくいように思う。モノラル版が単体で買えないのは残念だが、アルバムタイトルにもなっている"Help"は、ボーカルのテイクも大きく異なっており、人によっては MONO BOX が欲しくなる要因になるアルバムだろう。罪な一枚である。

2009年12月25日金曜日

Beatles For Sale [2009 Stereo Remaster] ビートルズ リマスター試聴

ビートルズ、4枚目のアルバム「フォー・セール」の2009年リマスター版を試聴した。1987年リリースの旧CDはモノラル版だったので、聴き比べの印象は大きく異なるが、音質的にも演奏やボーカルの輪郭がクリアになっており、かなり良くなっている印象を受けた。

前の3作と比べると、今回のリマスター版でもっとも音質が良くなっているのではないだろうか。"No Reply"では、1分40秒辺りから指を鳴らす音が右チャンネルではっきり聴こえるが、モノラル版では埋没してしまってよく聴き取れない。

"Rock And Roll Music"を聴くと、音のクリア度がとくによくわかる。ギターのカッティングやボーカルのメリハリが格段に向上している。1分36秒あたりに一瞬入るスネアの音も、同じ録音とは思えないほど新鮮に聴こえる。

"Mr. Moonlight"では、38秒あたりにフロアドラムの音が入るが、音のダイナミクスというか響き方がまったく異なる。1987年モノラル版は、全体的に音が平坦でこもっているのに対し、今回のステレオリマスター版では、音の輪郭がクッキリとして、まるで目の前のベールが一枚はがれたような印象さえ受ける。

全3作と、何故ここまでリマスターの質が違うのか、不思議なほどである。マスターテープの劣化状態によるのか、リマスターを施したエンジニアが異なるのか、理由は定かではないが、旧CDとの音質の違いは明らかだ。

ステレオとしての定位やバランスも、今までの3作と比べ良くなっているので、前回のCD化で何故モノラル版が採用されたのかも謎である。デビューアルバムから順番に旧CDとの比較試聴をしてきたが、初期の4作品のなかではもっとも音質が向上しており、充分納得のいくリマスターだといえるだろう。